姉(2)

2005年11月15日
前回の日記で書いたように、今日の日記は3年前の日記のコピィペースト。

僕と姉は物心つくころからずーっと仲が悪かったのだが、この文章を書いた2002年の9月頃、ようやく姉と打ち解けられるようになってきた。わだかまりが解消された頃の日記。

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先月下旬のことだ。
勤務中に、携帯電話が鳴った。父親からだった。
「元気か?」と聞かれ、「うん。」と答える。
「こっちに帰って来ないか?」
「え?珍しいね、父さんがそんなこと言うなんて。」
そうなのだ。父は、そっちで好きなようにやれといつも言っていて、帰って来いなんて言うのはこれが初めてである。
時間が無かったため、父がなぜそんなことを言うのか聞きそびれたまま電話を切ってしまった。何か重要な話でもあるのだろうか。
しかし考えても結論の出るたぐいのことではなく、仕方なく、連休に帰省してきた。

帰宅して2日目の夕方、父親と二人きりになるチャンスがあった。
父親は居間でテレビを見ていて、母も姉も外出していたのである。
僕はおもむろに切り出した。
「ねえ、父さん。帰って来いって言うから帰ってきたけどさ、何か話でもあるの?」
すると父は振り向いて、少しの間があった後、衝撃的なことを言った。

話は少し先走る。
実家から東京へ戻るとき、姉が車で渋川駅まで送ると言い出した。用事があって出掛けるから、そのついでに、だそうだ。

姉は高校で教師をしている。強気な性格をしていて、断定的な言い方を好み、中途半端なことはしない。外見は、弟の僕が言うのも変だが割と整った顔立ちで、色が白く、つまり男にもてるタイプだ。しかし僕の知る限りでは姉が誰かを好きになったということはなさそうで、少し冷めた感じである。真面目な姉はいい加減な僕とウマが合わず、あまり会話をしないので、僕が知らないだけかもしれないが。
車内でも話が弾まなそうだ、と思っていたが、車が動き出すと姉は唐突に爆弾発言をした。
「あたしね、来年結婚するかもしれないんだー。」
「はっ!?」
「話の流れでね。そうなりそうなのよ。あ、そこのお茶飲んでいいからね。」
缶に入ったお茶なんてどうでもよく、珍しく優しいこと言ってくれるじゃんなどとつっこむ場合でもなく、
「え、ああ、相手はやっぱり先生なの?」
と聞くのが精一杯だった。
「うん。歴史好きな人でね。あちこち連れ回されるの。」
「群馬じゃあんまり史跡ないんじゃないかな。」
「そうね。
 ○○(←僕の下の名)、歴史の本がうちにいっぱいあったよね。あれカレシにあげたら喜ぶと思うんだけど、まだうちにあるかな。」
僕は本当に驚いた。僕にズケズケと物を言い、人の言うことの揚げ足をとり、間違ったことを強引に正当化する、そんな姉が照れくさそうにしゃべっている。こんなの初めて見た。
僕はちょっと動揺しながら、
「ああ、あげたり捨てたりしていないからあるはずだよ。」
「そう・・・。カレシ社会の先生じゃないんだけどね。」
車は渋川市内に入ったが、姉は、予定を変更して新前橋駅まで送ってあげると言い出した。
「渋川に用事があるんじゃないんだ?」
と僕が聞くと、
「ううん、太田に用があるの。」
と言う(大雑把な位置関係を説明すると、渋川の先に太田があり、前橋に寄るのは遠回りになる)。
「カレシは太田に住んでいてね、会いに行くの。」
この瞬間、まるでドラマのBGMのように、カーステレオから「風笛」が流れてきた(NHK連続テレビ小説「あすか」テ−マ曲。imageというアルバムの13曲目。オーボエのメロディが切なすぎる)。
僕はなぜか笑いが込み上げてきた。姉が女性であるという当たり前の事実に、このとき初めて気付かされたようなものだ。

姉さんは本当にいい人を見つけたわけだ。
姉さんに惚れた人は僕の知る限りでもたくさんいるのに、その中から一人選んだのだから。
姉さんのカレシは、同級生のAちゃんよりも、子持村に住む剣道部員よりも、久保田利伸似のKさんよりも、バンドをやっていたMさんよりも、ディズニーランドでデートした年下の男の子よりも、思い余って電話かけてきた教え子よりも、いい男なんだな。

僕が知るのはほんの氷山の一角に過ぎないけど、ベストな男性を見つけた姉さん、おめでとう。

さて、「何か話でもあるの?」と聞いたとき、父親は何と答えたか。
「いや、そういうわけじゃないけどさ。
 ○○(←僕の下の名)、ちょっと太ったんじゃないか?」
う・・・、話は特にないのか。何のために帰省したのかわからないじゃないか。

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続く。

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