我孫子武丸の「人形はライブハウスで推理する」を読了した。これは推理小説の短編集。

本書は人形シリーズの第4作にあたる。明るいタッチのユーモアミステリのシリーズだ。
前3作は「人形はこたつで推理する」「人形は遠足で推理する」「人形は眠れない」。
いずれも主人公は妹尾睦月(せのお むつき)。保育園の保育士をしていて、名前のせいで子供たちからは「おむつ」と呼ばれている。
その恋人が朝永嘉夫(ともなが よしお)。気弱で優しい腹話術士。シリーズを通して、2人の仲が発展していく。
睦月の心理が書かれたシーンも多く、謎解き以外の部分でも楽しめる。

この2人がいろいろな事件に巻き込まれるのだが、探偵役は嘉夫が操る人形の鞠小路鞠夫(まりこうじ まりお)。嘉夫が鞠夫をカバンから出すと、鞠夫は毒舌をまじえながら謎を解いてしまう。
「じゃあ人形を出さずに嘉夫が謎を解けばいい。」というツッコミが入りそうだけど、嘉夫と鞠夫の関係は複雑で・・・、詳しくはこのシリーズを最初から読むべし、読むべし。

「人形はライブハウスで推理する」は、推理小説の核である「謎」がちょっと小粒な印象を受ける。それでも面白く読めたのは、たぶん話の展開に無理が無いからだと思う。
この短編集の中で一番面白かったのは、「夏の記憶」。タイトルからして僕好みだったりするけど、内容もいい。
睦月が幼い頃、ある友達とケンカをしてしまう。仲直り出来ないまま友達は転校してしまい、睦月はお詫びの手紙を出したが、戻ってきてしまった。友達は嘘の新住所を教えたのだろうか、という話。
鞠夫が推理した真相が、せつない・・・。
推理小説なのに、読むと優しい気持ちになれる佳作。

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